『今から、海に行こう』



そう言って、のっぽで金髪の少年は、とても小さな少年の手を引いて寒いこの時期に、海へと向かった。







砂浜に描いたLOVE









「なんで冬の時期に、海なの?」


そう問いかけてきたセナに、連れてきた張本人は、背を向け海を眺めていた。
そして、ゆっくりとセナの方へと振り返った。


「なんか唐突に、行きたくなったんだ、セナと。」


思い出が詰まったこの海に。
と、子供っぽく笑う水町に、ほんのりと頬を染める。


「もう、水町くんは・・・」


どうして、こうも恥ずかしい言葉が、言えるのだろうか。
熱くなった頬を、両手で隠し、水町に背を向ける。


「ん?セナ、どうしたんだ?」
「な、なんでもないよ・・・!」
「つっても、耳、真っ赤だぞ」


突然、背を向けたセナに、水町は首を傾げる。
セナの、その行為が照れ隠しとは知らず、何度も詰め寄る。


「もう水町くんの無神経!馬鹿!」


まさか、セナの口から『馬鹿』と言う単語が出てくるとは。
あまりの事に、水町はビックリして目を丸くする。


「ちょ、セナ!?さすがの俺でも、それ言われたら傷つくって!」
「水町くんが?」
「・・・何その意外そうな顔…」
「え、だって・・・」


これもまた、まさかの反応だった。
それも、お互いさまのようで。


「水町くん、いろんな意味でタフそうだったから・・・」
「それは否定しない・・・・が!」
「が?(否定しないんだ)」
「好きな子に言われたら、すんげぇ傷付く」


親に叱られた子のように、しょんぼりする水町の姿に、愛おしい気持ちで胸がいっぱいになった。


「そう、だよね。無神経と馬鹿は、言いすぎた。ごめんね、水町くん・・・」
「ん…いーのいーの。気にすんなって。」
「水町くん・・・」


ギュッと抱きしめてくれた彼に、なんだか泣きたくなった。


「あ、わりぃ。苦しかったか」
「あ、ううん。そんなことない!」


じんわりと目元に出た涙が、苦しさから来るものだと感じた水町は、すぐに体を離した。
そして、あまりにも気まずくて、一瞬にして沈黙が流れた。


「「・・・・・・・・・・・」」





(ああ・・・・違うのだと、何故言えないのだろうか)




咄嗟に出なかった言葉。
恋になれば、恋愛になれば、いつだって臆病だ。
それは水町だって同じこと。



(んーと、これは・・・)



だんだんと空気が重くなっていく事に、危機感を覚えた水町は、普段使わない頭をフル回転させ、考えた。



(はぁ・・・何やってるんだろ、僕。せっかく水町くんが、海に連れてきてくれたって言うのに。)


そう思って顔を上げる。
すると・・・・・・。


「・・・・水町くん、何やってるの?」


その言葉通りに、水町はセナに背を向け『何か』をやっていた。


「ん?ちょっと待ってな」
「う、うん」


頭に?を浮かべたまま、素直に頷く。
その姿が可愛いと思われてるとは知らずに。


(・・・?何か書いてるのかな?)


確かに何かを書いている。
しかも大きな字だろうか。

待ってな、と言われたが、待てと言われれば気になる。
真面目である分、素直でもあり、こうやって待てと言われて待つ所が、セナの性格を表している。
が、しかし。
人間の性だろうか、待てと言われれば見たくなる。

そっと背後から、顔を覗かせる。


「セーナ♪待ってろって言ったろ?」
「え?わっ!」


すっぽりと何かに覆われたセナは、慌てた。


「な、何!?」
「俺の帽子を被せただけ♪」
「び、びっくりした・・・」
「こっちがびっくりしたって。」
「え?」


驚くセナ見つめながら、水町は苦笑いを漏らす。


「だって、見られたら危うくサプライズじゃあ無くなるじゃん」


その言葉場に驚きと、また?が頭に浮かぶ。
そして後もう少しだからと言って、帽子で顔を半分埋めたままのセナをそのままにし、中断していた作業を再開する。


(悪いことしちゃったなぁ・・・)


これもまたセナの性格。
反省して、声が掛かるまで素直に待つ。


「・・・・・・・・・・・・・ンはっ!!出来た!!!」



数分後、彼の声にハッとする。
そして手を引かれて、何処かへと引っ張って行く彼に、セナはいきなりの事に、足がもたつく。


「ああと、ごめん!帽子そのままだった!」
「・・・・・・水町くん;;」


やった張本人が忘れてるなんて・・・・と、呆れていたら、ふわりと体が浮いた。


「え!?え!?」


さっきからやたらに驚く展開ばかりだ。
水町に抱っこされていると分かるまで、時間がかかった。


「うし!ここの高さが、ちょうどいいかな」
「高さ?」
「セナ、帽子とってみ?」
「う、うん」


そう言われ、セナはそっと帽子をとってみる。
たった数分でも、外の光がとても眩しかった。
そして、光に慣れ出した頃、辺りを見渡し驚いた。


「っこれって・・・・」
「俺さ、無償にセナに会いたくなってさ。んで、今日この海に誘ったんだ」
「うん・・・」
「そんで、ぎゅうって熱くなった気持ちを、どう伝えようか考えてて…・」


抱っこされたままのセナは、深呼吸をする水町の体温がなんだか熱く感じた。
この光景を見たせいかもしれないけれど。


「そんで、さっき、これ思いついたんだ」



惜しげもなく笑う水町。
そんな姿に、セナはカァアと、顔を赤くして、思わず叫んでしまった。


「っ~~~///やっぱり水町くん、馬鹿だ!」





俺は、心からセナを愛しているんだ!
「ちょ、えー!!?それは無いんじゃないの!!?」
「ありなの!もうなんでそんな恥ずかしい事ができるの!」
「んはっ!そんなの当たり前じゃん!セナ愛してるんだから、出来るんだ!恥ずかしくなんかない」
「っっ////」







END
2013/3/1
お題:確かに恋だった様




・・・・・
ただのバカポーになってしもうた(^p^)
しかもセナ、ツンである。

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