いつからだろう。
君を、こんなに身近に感じ始めたのは。

意識する度、なんだか自分が誰かになったような感じになってしまう。


不思議だね。
幼い頃から、こんなにも長く一緒にいるのに。













君しかいらない
(だって、こんなにも君に恋をしているんだから。)









「あ!鷹君!おはよう!」


朝、と言ってもまだ人があまり出歩かない早い時間帯に、鷹はある家へと向かっていた。
そして、おもむろに立ち止まり、鞄から携帯を取り出そうと手をかける。
と、同時に小声ではあったが上から、聞きなれた声に顔を上げれば、ニコニコと微笑む女の子がいた。


「…おはよう、セナ」


挨拶を返せば、セナは嬉しそうにより一層、笑みを深くする。
その笑顔は、反則的にかわいいと内心思ったのは、ここだけの話。


「ちょっと待ってて。すぐ行くから。」
「ん…」


コクリと頷けば、窓を閉めたセナの姿は見えなくなり、玄関前で待ってると僅かに「行ってきまーす」との声と共に、玄関の扉が開く。
ふわりと制服のスカートを靡かせ、鷹の所へと駆け寄ると、二人は自然に手を繋ぐ。
何かを喋る訳でもなく二人の間には沈黙が流れるが、これは二人にとっていつもの事で、幼い頃からのせいなのか、お互いお喋りが得意ではない。
鷹は必要以上に喋らないだけであって(話すのが面倒だとも取れる)、セナはセナで人見知りをする為か親しい人としか喋らず、引っ込み思案である。


「俺が来たのよくわかったね」
「もしかして、びっくりした??」
「ああ、少しだけ」


ふと、鷹の脳裏に浮かんだ先ほどの出来事を短い言葉で口にすると、セナは少し不安げな表情を覗かせる。
それを見て、あまり表情を崩さないポーカーフェースの鷹が、悪戯っぽい笑みを浮かべたのだ。
すると、あんなに不安げだったセナの表情が崩れ、また元の笑顔に戻った。


「なんかね、鷹君が来てるなーって思って窓覗いたら、ホントにそこにいたんだもの」


自分でもすっごいビックリしちゃって。こんな事あるんだね、とセナは嬉しそうに笑った。
そんなの俺だって嬉しい、だなんて言ったらセナは引くだろうか?否、セナは優しいから、そんなあからさまな態度はとらない。
幼い頃から一緒にいるのだから、セナのことを一番よく知ってるのは、この俺なんだから。


「ああ。ホントにビックリだ」
「そうだね。嬉しい…って思うの、変…かな」
「全然。俺だって、なんだか嬉しかったし。」
「ふふ。そっか、同じだね」
「…同じ…うん。そうだな」


ああ、やっぱりセナはそんな子ではなかった。
セナは、昔のまま。優しい子。控えめで、おしゃべりが苦手な子。
いつもそそっかしくて、小さい頃なんか転んでばっかでいつも傷だらけで。

まるで妹のようで、ただ護りたい存在で。


ただそれだけだったのに。


いつからだろうか。

この感情が、芽生えたのは。















「やぁ!おはよう!セナ君、鷹」


帝国に着くと、未だに生徒の姿はない。他の運動部すら誰一人といない。
それだけ今の時間が早いのが分かる。



……ただ一人を除いては。




「……おはよう」
「大和君、おはよう。いつも早いね!」


ロッカールームに着くと、爽やかな笑顔で出迎えてくれたジャージ姿の大和がいた。
鷹は、興味がなさそうに挨拶を交わし、自分のロッカーまで足を進める。…さりげなくセナを背にしながら。


「はは!君らが、こんなに早く来てるんだ。俺だって、負けてられないさ」


爽やかかつキラリと光る歯がこんなにも似合うのは、この帝国の中で彼だけだろう。
鷹もセナも、迷いなくそう思ってるとは露知らず、眩しい笑顔を惜しみなく披露していた。

帝国の朝練は自由参加なのだが、親の本庄勝のおかげで鷹は練習を毎日欠かさず部活がある日は、こうやって朝早く朝練をするのだ。
それを知ったマネージャー兼選手でもあるセナも、苦手な早起きも鷹の為に克服し、今ではまったく苦ではなくなったらしい。
最初は、さすがの鷹も驚き、無理して体を壊さないだろうかと心配するばかりだったが、だんだんとセナの頑張る姿に、鷹も何だか嬉しくなりこうして、毎朝一緒に登校している。


「二人とも、本当にいつも仲がいいな」
「ホントに?ふふ、そう言ってもらえるとなんだか嬉しいね、鷹君」
「セナが嬉しいんなら、俺も嬉しい…かな」


未だに手を握られているそれに、大和は思わず口にする。

けれど、それがいけなかった。
後悔したってもう遅い。

こんなにもセナが嬉しそうに笑って鷹を見上げ、僅かに手を強く握るその姿は、可愛らしかった。



(その笑顔も、その視線も全て俺に向いて欲しいだなんて。)



そして、大和が心底驚いたのは、それに応えるかのように握り返し、表情の機微に乏しいはずの鷹が、幸せそうに笑ったのだ。
それはまるで、相思相愛の恋人同士のよう。


(これで恋人同士でないとは、なかなか憎たらしい)


それは、大和だけではなく部員一同も思っている。
この二人は、幼馴染の域を脱してはいない。

鷹は、なんとなくセナに対しての感情を自覚している。
しかし、セナは全く無い。気配すら無いのだ。

見ていてると、なんともじれったい。
鷹が自覚しているのなら、想いを告げればいいのに。と、キャプテンであるヘラクレスが口にすれば一同が頷く中、大和だけは頷かず、むしろ挑戦のし甲斐があるじゃないかと、これはまた爽やかな笑顔で宣言したほどである。鷹の前で。


「ああ。俺も、セナ君と手を繋ぎた…て、鷹、」
「…何?」
「人が話してるときに遮るなんて、よくないぞ?」
「知っている。けど、セナに関しては別だ」


大和の言葉どうり、セナと大和の間に鷹が割って入ったのだ。
爽やか過ぎるその笑顔は、どこか黒いオーラを放っているが、鷹は物怖じしない分しれっと聞き流す。
それが、挑発されてるみたいで、セナに想いを寄せてる者として大和は面白くはなかった。

セナはセナで自分が話題の中に入ってると何となく察したが、異様な空気にただオドオドとしながら見守る事しかできない。




鷹と大和の無言の攻防戦は、朝練に来たヘラクレスとアキレスの「お!ついに、セナの取り合い勃発か!」という、嬉しそうな楽しそうなツッコミが入る。
その発言で勝負ウェルカムの大和の心に火がつき、「セナ君を賭けて勝負だ!」と自信に溢れる言葉で発言する彼に驚きの声を上げ、いつも大和の暴走を冷ややかに見ていたあの鷹でさえ無言で頷く姿に、セナはさらに驚きの声を上げる。



「え?え?何がどうなってるの?なんで僕を賭けて勝負なの??」



??と、たくさん浮かべてはアキレス達に助けを求めるセナの姿は、まるで小動物のようで可愛らしい。
そんなセナの頭を、ぐりぐりと荒く撫でまわしたヘラクレスに、痛いですと抗議をする。



「いつもの事やろ。心配せんでええねん。どうせ勝負は着かへんと思うし。」
「そ、そうですけど…」
「セナは鈍感さんやからなー」
「鈍感?何のことですか?」
「…見てるこっちがハラハラするわ」
「まぁ、花梨とええ勝負やな。アキレス」
「やかましいわ!!大きなお世話やっちゅーねん!!あいつらほっといて練習や!」


ギャーギャーと騒ぎ立てるアキレスに、茶茶を入れながら大笑いのヘラクレスが言った言葉がいまいち分からないまま、その日の朝練は早くも終わりを告げた。


セナにとってこの日の放課後、一生忘れられない出来事になろうとは誰も知らない。









続く。
(文の才能がほしい。思ったよりまとまらなかった…内容的には、鷹VS大和×瀬那的な話にはなりましたが、次は鷹セナオンリーで行きます。絶対予告します。…たぶん←)




スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。