「鉢屋三郎先輩はすごいです!!」


瞳をキラキラさせて、華が飛ぶような笑顔。
終いには、とってもカッコいいです!!なんて言うもんだから、鉢屋三郎の顔はデロデロに破損している。
この顔が、拝借している不破雷蔵の顔だから、とてつもなく違和感ありまくりだ。
そもそも、その顔の持ち主である本人が、そんな顔をしないのだからなおさらである。


「相変わらずキモい顔してんな」
「ははっ!僕の顔は、そんな破損しないなんだけどなぁ」
「雷蔵、顔が般若見たいで怖いんだけど。」


五年の教室から見えるその光景に、兵助はあまり興味なさそうに言う傍で、雷蔵は黒いオーラを放ち、八左ヱ門はそんな雷蔵に後ずさりをしていた。


「でも、三郎の何処がカッコいいんだろ」


そうは見えないし、ただの変態でストーカーだよね。
なんて兵助が言えば、他の二人も頷く。


「ストーカーまではいかないが、変態はお前にぴったりだよ」
「うん、兵助の変態さに比べたら、まだ三郎の変態さは可愛いもんだ」
「え、俺ってそんな認識されてんの?」
「ああ。この学園内でそう認識されている。」
「そんなことないけどなぁ…ただ「俺の豆乳をぶっかけてもいいか」とか「豆腐をぶっかけたら美味しいだろうな」って乱太郎に、言ってるだけなのに。」
「そう言ってるから、変態って言われんだよ。つか、いつの日かお前が、また実行しそうで怖いんだけど。」
「ああ、それは大丈夫だよ」


雷蔵の言葉に、八左ヱ門が「え?」と言えば、にっこりと笑う。
その笑顔でなんだか分かった気がして、苦笑い。


「善法寺先輩に、頼んであるから。」
「でも、お前その先輩と仲悪くなかった?」
「え、当たり前じゃない」
「・・・・・・(こう言う時はお互いを利用してんのね)」


乱太郎を好きな者同士なら、この学園内にうようよいるが、その中でも何故だか雷蔵と伊作は仲が悪い。


「(ううん…乱太郎に対してすごく初なくせして、護る事に関しては腹黒いんだよなぁ)」


会えばどこかぎくしゃくで、喧嘩などなくても、何処か不穏な空気。
まぁ似た者同士だから余計にかと、ふとそう思いながら、外を見るといつの間にか、勘右衛門も混ざっていた。
三郎は不服そうな顔で、勘右衛門を睨んでいたが、何も言わない所を見ると、乱太郎があまりにも楽しそうに喋っているからだろう。


「(三郎も、初な奴め)」


いや、初というよりもヘタレと言うべきか。
だって、なんだかんだやりながら、手を出した事が無い。
何処ぞの変態小僧が、数日前に乱太郎に豆乳をぶっかけ襲うとした事があったそれに比べたら、まだまだいい方である。
しかし、何も分かってない乱太郎は「誤ってかけちゃったんですよね」と、可愛らしい顔と声で言うもんだから、兵助がつけあがっちゃって。
あの後の雷蔵が怖くて数日間、話しかけられなかったと、遠くもない記憶を思い出し、はぁと溜息を吐く。


「(それに乱太郎に会えば、そんな感じも出さないのは、さすがと言うべきか)」


怖がらせてはいけない、とひっこめるその器用さに、あっぱれと言いたくなる。


「でも、疑うって事知らないよねぇ、あの子は。」
「ん?なんの話?」
「いやいや、こっちの話」
「ふーん?」


学園の外に出れば、疑うと言う行為をするくせに、学園内に戻れば疑うという行為が無くなる。
特に上級生には無くなるようで、先ほど三郎をカッコいいだと言っていたのがいい証拠だ。
ストーカー行為を行っている先輩の何処がカッコいいのだろうか。
兵助の変態行為にだって疑わない。


「(まぁ、まだまだ忍たまなりたてだから、仕方ないか)」


だから、こうして雷蔵や伊作が、組んで守っているのだ。
微力ながら、八左ヱ門と勘右衛門も協力している。


「好きな子ほど、護りたくなるなぁ」





疑う事を知らず。
「はっちゃぁん、何言っちゃってんの?」
「いや、当たり前な事じゃないか。雷蔵くん」
「当り前なんだろうけど、脈なしだと思っていtのに…残念だよ」
「え、俺って死亡決定?」
「はは、ご愁傷様だな」
「お前もだよ、兵助☆」
「え?」






2013/05/03
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